空き家活用を賃貸で|初期費用を抑えて始める
空き家活用の賃貸で初期費用を抑える基本の考え方
空き家の活用を賃貸で進めながら初期費用を抑えるには、直したい箇所をすべて最初に自己資金でまかなうのではなく、費用を役割ごとに分けて優先順位をつけることが有効です。まとまった現金がなくても、貸し出しに向けた準備を段階的に進められます。
総務省統計局「令和5年住宅・土地統計調査」(2024年公表)では、全国の空き家は約900万戸、空き家率は13.8%と報告されています。空き家を持て余している方は珍しくなく、まずは「お金をかけずに動かせる部分」から手をつける考え方が現実的です。
- 初期費用は「原状回復」「設備・内装の更新」「募集の準備」の3つに分けて考える
- すべてを一度に直さず、入居者が決まりやすい箇所から手をつける
- 負担割合を0・50・100のように分けると、手元資金に合わせて選びやすい
- 想定家賃と回収したい年数から、かけてよい費用の上限を先に決める
- 雨漏り・給排水・シロアリなど安全と住み心地に関わる部分は削らない
「初期費用」に含まれるものを分解する
空き家を貸し出すときの初期費用は、一つのまとまりではなく性質の違う出費が混ざっています。分けて把握すると、どこを削れてどこは残すべきかが見えてきます。
- 原状回復・清掃:長く空いていた場合の傷みやにおい、水回りの汚れ、残置物の処分など
- 設備・内装の更新:入居者に人気の設備や、ターゲットに合わせた内装
- 募集の準備:写真撮影・間取り図・ポータルサイト掲載など、入居希望者に伝えるための費用
このうち全面改修を前提にしないことが、初期費用を抑える最初の分かれ道になります。塗装や部品交換で印象が変わる箇所も多く、費用対効果を見ながら範囲を絞ることが大切です。どこに手を入れると効きやすいかはアパートリフォームの費用対効果|空室は塗装と部品交換で狙う(当社ブログ)でも整理しています。
費用をかける前に確認したいこと
お金をかける前に、その空き家が「なぜ借り手がつかないのか」を整理しておくと、無駄な出費を避けやすくなります。原因が家賃設定や見せ方にある場合、大きな工事をしなくても改善が期待できるためです。
当社が岡山市・倉敷市で現場を見てきた中では、次のような原因が重なっているケースが多くありました。
- 家賃・敷金・礼金・更新料が周辺の募集条件と合っていない
- 写真の枚数が少ない、スマホ撮影でぼやけている
- 間取り図が古い・手書き・白黒のまま
- 主要なポータルサイトに掲載されていない、掲載順位が低い
- 共用部の蜘蛛の巣、ポストのチラシ溜まり、ゴミ置き場の散らかり
- 室内のにおいや汚れ(コンロの油汚れ、鏡のうろこ、虫の死骸など)
ここに挙げた項目の多くは、工事をしなくても改善できるものです。費用の判断は、原因を特定してからで遅くありません。
かけてよい費用の上限を家賃から逆算する
初期費用の上限は、感覚ではなく回収の計算で決めるとぶれません。考え方はシンプルで、想定家賃と回収したい年数から逆算します。
- 周辺の募集条件を確認し、この物件で現実的に狙える家賃を仮置きする
- 想定家賃 × 12か月 × 回収したい年数 で、回収可能な総額の目安を出す
- そこから管理料・点検・清掃・固定資産税などのランニング費用を差し引く
- 残った金額の範囲に、改修費と募集準備の費用を収める
この計算をしておくと、「見積もりが高いか安いか」ではなく「回収できるかどうか」で判断できます。想定より工事費が上回る場合は、範囲を絞るか、次章の負担割合を分ける方法を検討します。
負担0・50・100で初期費用を分ける進め方

初期費用を抑えて空き家を貸し出すには、改修や整備の費用を誰がどれだけ負担するかを「0・50・100」のように割合で分ける進め方が現実的です。当社(満室本舗)でも空き家活用の再生負担を0・50・100の3プランに分け、契約期間は3〜15年の範囲で設定しています。手元資金の状況に応じて、負担の重さを選べるようにするためです。
3つの負担割合の考え方
| 負担の型 | オーナーの初期負担 | 向いている状況 | 注意したい点 |
|---|---|---|---|
| 負担0の型 | ほぼかけない | 現金を使わず、まず貸し出しを始めたい | 契約期間が長くなりやすい・仕様の自由度は下がる |
| 負担50の型 | 半分程度を分担 | 費用と自由度のバランスを取りたい | 負担範囲の線引きを書面で明確にする |
| 負担100の型 | 自分で負担 | 仕様を自由に決めたい・資金に余裕がある | 回収年数の見通しを先に立てる |
負担を軽くするほど、契約期間や仕上げの自由度に条件がつくのが一般的です。契約は数年から十数年の中長期になることが多いため、期間・原状回復の条件・途中解約の扱いを契約前に必ず確認しましょう。
負担0の型を選ぶときに確認する項目
負担0の型は現金の持ち出しを抑えられる一方で、条件の確認を省くと後から想定外が生まれます。契約前に次の点を書面で確かめてください。
- 契約期間と、期間中に自分で使いたくなった場合の扱い
- 改修費を誰が負担し、途中解約時に精算が発生するかどうか
- 仕上げ(内装・設備)の仕様をどこまで選べるか
- 返却時の原状回復の範囲(借主側が加えた造作の扱い)
- 家賃の受け取り方(転貸か、直接賃貸か)と改定の条件
とくに途中解約時の精算条件は、初期負担が軽い契約ほど確認が欠かせません。
ランニングの費用も合わせて見る
初期費用だけでなく、貸し出したあとに毎月かかる費用も合わせて確認すると、手残りを見誤りにくくなります。管理を委託する場合の費用の見方は賃貸管理会社の乗り換え費用|違約金と実費の見方がわかる(当社ブログ)でも整理しているので、契約後の「思っていた費用と違う」を避ける材料にしてください。
- 初期費用:改修・清掃・残置物処分・募集準備など、貸し出し前の一時的な出費
- ランニング費用:管理料・消防設備点検・定期清掃・貯水槽清掃・固定資産税など、毎月または定期でかかる費用
共用部のある建物では清掃の質が印象を左右します。委託先の選び方はアパート共用部の清掃業者の選び方|空室対策から逆算する(当社ブログ)が参考になります。
現金を使わずに空き家を貸し出す手順

現金の持ち出しを抑えて空き家を貸し出すには、費用のかかる工事から始めるのではなく、原因の把握と見せ方の改善から順に進めるのが効果的です。次の順番なら、少ない負担で反響を確かめながら進められます。
- 空室・空き家になっている原因を洗い出す(家賃設定・見せ方・設備)
- 費用をかけずに直せる点(清掃・共用部の整理・写真の撮り直し)を先に対応する
- ターゲットを一つに絞り、必要な整備だけに費用を集中させる
- 負担割合(0・50・100)を選び、資金に合う進め方を決める
- 募集条件と掲載を見直し、反響を見ながら微調整する
費用をかけずにできる改善から始める
工事の前に手をつけられることは想像以上にあります。清掃、共用部やゴミ置き場の整理、写真の撮り直し、間取り図の作り直し、掲載媒体を増やすといった対応です。内見前の印象づくりについてはアパートのゴミ置き場が空室に響く|内見前に整える(当社ブログ)もご覧ください。
当社では、オーナー様の現金負担を抑えるために次のメニューを費用をいただかずに提供しています。
- プロカメラマンによる建築用カメラでの物件写真撮影
- 物件専用ホームページの制作(ゴミ置き場・駐車場配置図・ライフライン情報まで掲載)
- 入居者の仲介手数料0円
- SUUMOの上位PR枠への掲載代行
- 物件の魅力が伝わる資料・チラシの制作
- 部屋が決まるまでの管理手数料0円(満室物件は3ヶ月無料)
空室に管理料をいただかない仕組みにしているのは、早く決まらなければ当社の収入にもならず、オーナー様と利害が一致するからです。
有料の工事に進むかどうかの判断
費用0円でできる改善を終えても反響が伸びない場合に、はじめて有料の整備を検討します。その際もターゲットを一つに絞り、その層が重視する箇所だけに絞ると総額を抑えられます。
当社の管理事例では、築30年のRC造アパート(1K・バストイレ別・オートロック・25部屋)で募集条件の見直し、予算を抑えたリフォームと清掃、仲介手数料0円、ポータル掲載の改善、社会人女性に絞った内装リフォームを行い、空室が順次埋まりました。詳しい流れは当社の管理事例(築古RC造アパートの募集見直し)でご紹介しています。※結果は物件の立地・状態により異なります。
お金をかける工程は、原因の把握と無料でできる改善を終えてからで遅くありません。
貸し出す前に片づけておく準備と費用
空き家を賃貸に出す前には、募集の前段階として済ませておく準備があります。ここを飛ばすと、募集開始が遅れたり追加の出費が発生したりします。
残置物と片付け
長く使われていない家では、家具や家財の処分が最初の出費になりがちです。量が多いほど費用も期間もかかるため、貸し出しの検討と並行して進めると全体が早く動きます。片付け・解体・売却まで含めた費用の見方は実家じまいの費用|片付け・解体・売却の目安を知る(当社ブログ)で確認できます。
名義と権利関係の確認
相続した空き家では、名義が故人のままだと賃貸借契約や工事の発注で支障が出ることがあります。手続きにかかる費用の考え方は不動産の名義変更の費用|相続・贈与・売買で比べる(当社ブログ)にまとめています。なお、登記や相続の個別の判断は司法書士・税理士など専門家にご相談ください。当社は宅地建物取引業者・賃貸住宅管理業者としての立場でお手伝いします。
削ってはいけない費用
初期費用を抑える方針でも、次の項目は先送りしないことをおすすめします。入居後の不具合対応は、事前に直すより費用も手間も大きくなりやすいためです。
- 雨漏り、給排水管の漏れ、シロアリ被害など建物の劣化に関わるもの
- ガス・電気・水道など、生活に直結する設備の安全確認
- 火災報知器など消防に関わる設備の点検
補助金や制度で初期費用を軽くできるか
自治体によっては、空き家の改修や解体、活用に対する補助制度が設けられている場合があります。ただし内容と要件は自治体ごとに異なり、年度ごとに変わるため、2026年度時点でお住まいの自治体の公式ページを確認するのが確実です。
- 制度名・対象となる建物の条件(築年数、所在地、空き家バンク登録の有無など)
- 補助の対象になる工事の範囲と、対象外になる工事
- 申請の時期(着工前の申請が必要かどうか)
- 予算枠と受付期間(年度途中で終了することがある)
解体を含めて検討している場合の探し方と申請の流れは空き家の解体の補助金|自治体制度の探し方と申請手順がわかる(当社ブログ)で確認できます。
また「空家等対策の推進に関する特別措置法」は2023年に改正され、放置が進んだ空き家について自治体が指導などを行える仕組みが整えられています。貸し出して人が住む状態にすることは、こうしたリスクを避ける意味でも選択肢になります。固定資産税の取り扱いなど税に関する個別の判断は、自治体の窓口や税理士にご確認ください。
貸し方の選び方で初期負担は変わる
同じ空き家でも、どの契約の形で貸すかによって、必要な初期費用と将来の自由度は変わります。代表的な選択肢を押さえておくと、負担の軽い進め方を選びやすくなります。
定期借家という選び方
借地借家法には、契約期間の満了で終了する定期建物賃貸借(定期借家)という仕組みがあります。将来的に自分や家族が使う予定がある空き家では、期間を区切って貸すことが検討材料になります。契約条件の設計は個別性が高いため、実際の締結にあたっては専門家や管理会社と内容を確認してください。
借主が手を入れる形で貸す
借主が自らの費用と手配で改修を行う「DIY型賃貸借」という形もあります。国土交通省は「DIY型賃貸借に関する契約書式例とその解説」(2016年)を公表しており、工事の範囲、費用負担、退去時の造作の扱いを事前に取り決める考え方が示されています。貸主の初期負担は軽くなりますが、原状回復の取り決めがあいまいだとトラブルになりやすいため、書面化が前提です。
一括借り上げを検討する場合
一括借り上げ(サブリース)は空室時の収入が安定しやすい一方、賃料改定や解約の条件を確認しないまま契約すると想定が崩れます。賃貸住宅の管理業務等の適正化に関する法律では、サブリース契約の勧誘における誇大広告や不当な勧誘が禁止されています(2020年12月施行)。提示された賃料が将来にわたって固定されるのか、見直しの時期と基準はどうなっているのかを必ず書面で確認しましょう。
規模・立地・築年数による進め方の違い
初期費用を抑える進め方は、空き家の規模や立地、築年数によって力を入れる箇所が変わります。同じ「負担を抑える」でも、物件の条件ごとに優先順位が異なるからです。
- 戸建て・小規模:設備更新より、清掃と写真・間取り図の作り直しで印象改善を優先しやすい
- 築年数が古い物件:全面改修より、水回りや玄関など目につく箇所の部分補修が費用対効果を出しやすい
- 駅から離れた立地:家賃設定とターゲット設定の見直しが、工事より効くことがある
- ファミリー向け:人気設備(TVモニターホン、宅配ボックス、無料Wi-Fiなど)の有無が決まりやすさに影響しやすい
岡山市・倉敷市のように車移動が中心の地域では、駐車場の使いやすさや周辺情報の伝え方が入居の決め手になりやすく、工事より情報の整備でカバーできる場合もあります。当社が物件専用ホームページに駐車場配置図やライフライン情報まで載せているのは、他社の仲介担当者も紹介しやすくするためです。地域ごとの選び方は岡山の空き家活用の方法|費用と期間から選び方を決める(当社ブログ)でも扱っています。
初期費用を抑えるときにやりがちな失敗
初期費用を抑えるつもりが、かえって空室期間を延ばしてしまう失敗にはいくつか共通点があります。先に知っておくと、削るべきでない費用まで削る事態を避けられます。
- 安さだけで判断し、入居者が最も気にする水回りや清潔感を後回しにする
- 家賃を下げることだけを対策と考え、見せ方の改善に手をつけない
- 写真がスマホ撮影のまま・枚数が少なく、物件の魅力が伝わっていない
- 掲載媒体が少なく、そもそも見込み客の目に触れていない
- 負担0の型を選ぶ際、契約期間や原状回復の条件を確認しないまま契約する
- 空室が続いても、どんな募集活動が行われているのか把握していない
特に、家賃の値下げは一度下げると戻しにくく、手残りに長く影響します。値下げの前に、見せ方や募集条件で改善できる余地がないかを確認することが大切です。また、募集の動きが見えないときは、他社の仲介にきちんと物件が開かれているかも確認しておきたい点です。仕組みは賃貸管理会社の囲い込みとは|両手仲介の仕組みを知る(当社ブログ)で解説しています。収支の見通しが立たないまま進めて後悔しないための考え方は不動産投資はやめとけと言われる理由と立て直し方(当社ブログ)も参考になります。
貸し出しまでの期間と、任せる相手の選び方
初期費用と同じくらい気になるのが「いつから貸せるのか」です。募集の準備、片付け、必要な補修の量によって変わりますが、契約から募集開始までを逆算して動くと空白期間を短くできます。
当社の場合、管理契約後に管理開始まで通常3ヶ月程度かかりますが、契約後すぐに写真撮影と物件専用ホームページの制作を行い、管理開始日までに満室を目指す進め方をとっています。すでに他社に管理を任せている場合、解約は3ヶ月前予告の契約が多く、オーナー様には解約書類へのご署名をお願いするだけで、現管理会社への対応や入居者への連絡手続きは当社が代行します。
- 切り替えの段取りと注意点:賃貸の管理会社変更|デメリットを防ぐ手順で進める(当社ブログ)
- いつ動き出すかの決め方:賃貸管理会社の変更タイミング|繁忙期から逆算して決める(当社ブログ)
任せる相手を選ぶときは、社名の知名度ではなく、空室に対して何をしてくれるかを具体的に確認するのが確実です。写真や物件情報の作り込み、掲載する媒体、空室期間中の費用の扱い、報告の頻度といった項目を並べて比べると、判断の材料がそろいます。初期費用を抑えられるかどうかは、工事の見積もり以上に、募集の進め方で決まる部分が大きいといえます。
よくある質問
初期費用0で空き家を貸すと、あとで負担が増えませんか?
空き家を貸せる状態にするまで、どのくらいの期間がかかりますか?
費用をかけずにまずできる空室対策は何ですか?
古い空き家でも初期費用を抑えて貸せますか?
今の管理会社から切り替える場合、手続きは大変ですか?
