賃貸管理会社の囲い込みとは|両手仲介の仕組みを知る
賃貸管理会社の囲い込みとは、他社経由の紹介が止まる状態のこと
「囲い込み」という言葉は、もともと不動産の売買で使われてきた言葉です。それが賃貸の場面にも転用され、オーナーさんの間で語られるようになりました。賃貸でいう囲い込みとは、物件を預かっている管理会社が、自社で入居者を決めたいために、他の仲介会社からの問い合わせを実質的に受け付けない状態を指します。
たとえば、他社の仲介会社が「◯◯アパートの201号室、まだ空いていますか」と電話をしたときに、実際は空いているのに「申込みが入っています」「今は紹介をお断りしています」と返される。あるいは、そもそも他社が案内するための図面や写真が用意されていない。こうした状態が続くと、部屋を探している人の目に触れる経路が細くなります。
- 囲い込み=空いているのに他社が紹介できない(しにくい)状態
- 電話口での断りだけでなく、資料が無い・ポータルに載っていないことでも同じ結果になる
- 賃貸には売買のような公的な情報登録の義務がなく、オーナーからは見えにくい
- 困るのは、空室期間が延びるオーナー側
つまり囲い込みは、悪意の有無よりも「結果として紹介経路が狭まっているかどうか」で捉えたほうが実務的です。
なぜ起きるのか|両手仲介と広告料という収益の仕組み

囲い込みが語られる背景には、賃貸仲介の収入の構造があります。まず、部屋が決まったときに仲介会社が受け取れるお金には、大きく分けて二つあります。
- 仲介手数料…入居者や貸主から受け取るもの。宅地建物取引業法にもとづく国土交通省告示(報酬額の告示)で、居住用建物の貸借の媒介は、貸主・借主から受け取る合計額が家賃1か月分+消費税が上限とされています。借主からは原則として0.5か月分+消費税が上限で、依頼を受けるにあたって承諾を得ている場合は1か月分+消費税まで受け取れます。
- 広告料(AD)…貸主(オーナー)が募集の広告宣伝費として支払うもの。金額や有無は物件ごとに異なります。
ここで、入居者を見つけたのが自社か他社かで、管理会社側の手取りが変わります。自社の店舗で決めれば、入居者からの仲介手数料と広告料の両方が自社に入ります。これがいわゆる「両手」の状態です。一方、他社が決めれば、広告料は他社に支払われ、入居者からの手数料も他社の収入になります。
| 成約の経路 | 入居者からの仲介手数料 | オーナーが払う広告料 | 管理会社側の受け取り |
|---|---|---|---|
| 管理会社が自社で決めた(両手) | 管理会社 | 管理会社 | 多くなりやすい |
| 他社の仲介会社が決めた(片手) | 他社 | 他社 | 少なくなりやすい |
この差があるため、「まず自社で決めたい」という動機が働きます。動機そのものは自然なことですが、それが強くなりすぎて他社の紹介を止めてしまうと、オーナーにとっては募集の窓口が減るだけになります。
売買の囲い込みとの違い|賃貸には情報登録の義務がない
売買では、専任媒介契約などを結ぶと、宅地建物取引業法により指定流通機構(レインズ)への登録と、依頼者への業務状況の報告が義務づけられています。登録されていれば、他社もその物件情報を見ることができます。だからこそ売買では「登録したのに紹介を断る」という行為が問題として扱われてきました。
一方、賃貸の募集や管理には、こうした公的な情報登録の義務がありません。どこに情報を出すか、どこまで他社に開示するかは、管理会社の運用に委ねられています。
| 売買(専任媒介など) | 賃貸の募集・管理 | |
|---|---|---|
| 情報の登録義務 | 宅建業法にもとづく義務あり | 法律上の義務はない |
| 依頼者への報告 | 法定の報告義務あり | 契約書の定めによる |
| オーナーからの見えやすさ | 登録の有無で確認しやすい | 確認方法を自分で決める必要がある |
賃貸では「違反かどうか」で判断しにくいぶん、オーナー側が募集の状況を確認できる形を、契約と運用でつくっておくことが現実的な対処になります。
囲い込みでオーナーに起きること|延びた空室期間はそのまま損失
囲い込みが問題になるのは、道義的な話だからではありません。空室期間が延びた分の家賃は、あとから取り戻せないからです。
たとえば家賃6万円の部屋が1室、本来より3か月長く空いたとすると、それだけで18万円の収入が失われます。同じ状態の部屋が3室あれば54万円です。管理手数料の率を少し下げてもらうより、空室期間が1か月縮むことのほうが金額として大きくなる場面は珍しくありません。
- 空室期間が延びるほど、募集条件を下げたくなる圧力が強まる
- いったん家賃を下げると、次の更新・次の募集にも影響が残る
- 「他社にも紹介してもらえていたのか」は、あとからでは検証しづらい
家賃を下げる前に打てる手については、家賃を下げずに賃貸空室を埋める方法と見せ方もあわせて確認しておくと、判断の材料が増えます。
囲い込みと「正当な自社優先」の線引きをどう考えるか
自社の店舗で先に紹介すること自体は、悪いことではありません。自社で決まれば手続きが早く、入居後の対応まで一貫することもあります。問題になるのは、それが他社の紹介経路を閉じる形になっているときです。次の三つの軸で切り分けると整理しやすくなります。
- 他社が紹介できる状態になっているか…写真・間取り図・設備情報・周辺情報がそろい、他社の営業担当が入居希望者に説明できる資料があるか。
- 募集の状況が報告されているか…問い合わせ件数、内見件数、他社からの反響が、月単位で共有されているか。
- 空室期間のコストを誰が負っているか…空室でも管理手数料が発生する契約か、家賃が発生している部屋だけの契約か。
三つめは特に重要です。空室でも管理料が入る契約だと、管理会社にとって空室が続くことの痛みが小さくなります。逆に、部屋が決まるまで管理手数料が発生しない形であれば、早く決めたいという点でオーナーと利害が一致します。仲介手数料を無料にする募集の考え方は、賃貸仲介手数料無料は岡山の空室対策に効くのか|仕組みで判断するで仕組みから確認できます。
囲い込みが起きにくい募集の形をつくる

他社に「紹介しないでください」と言わせないためには、他社が紹介したくなる状態を先につくるのが近道です。岡山市・倉敷市の現場で空室の原因を点検すると、囲い込み以前に、次のような理由で他社が案内をあきらめているケースが実際にあります。
- 写真の枚数が足りない、スマートフォン撮影でぼやけている
- 間取り図が古い・手書き・白黒のまま
- SUUMOなど主要なポータルに掲載されていない
- ゴミ置き場や駐車場の配置、インターネット環境などの情報が資料に無い
- 共用部にクモの巣やチラシがたまり、内見時の印象が悪い
- テレビモニターホン・宅配ボックス・無料Wi-Fiなど、周辺の競合にある設備が無い
実際に、他社から「家賃を下げるしかない」と言われていた長期空室の物件で、建築用カメラによるプロ撮影と、ゴミ置き場・駐車場配置図・ライフライン情報まで載せた物件専用ホームページを用意したところ、反響が増えて1か月で満室になった例があります。他社の担当者がそのページをそのまま入居希望者に見せられるため、紹介のハードルが下がったことが大きな要因でした。
また、岡山市北区津高の築30年・25部屋のRC造アパート(1K・バストイレ別・オートロック)では、相談時に13部屋が空室でした。募集条件の見直し、予算を抑えたリフォームと清掃、入居者の仲介手数料0円、ポータル掲載の改善、社会人女性にターゲットを絞った内装という組み合わせで、6か月で満室になっています。紹介経路を広げることと、紹介したくなる中身を整えることは、セットで効きます。
なお、結果は物件の立地や状態によって変わります。同じ手を打てば同じ期間で決まる、というものではありません。
- まず自分の物件が主要ポータルに載っているか、スマートフォンで検索して確かめる
- 掲載写真の枚数と明るさ、間取り図の見やすさを、近隣の競合物件と並べて比べる
- 他社の営業担当が説明に使える資料(設備一覧・周辺情報・配置図)がそろっているか確認する
- 直近3か月の問い合わせ件数・内見件数を管理会社に聞き、記録として残す
ここまで確認しても状況が動かない場合は、体制そのものを見直す段階です。判断の基準は空室が続くとき管理会社を変更するタイミングと判断基準に、かかるお金の内訳は賃貸管理会社の乗り換え費用|違約金と実費の見方がわかるにまとめています。
よくある質問
賃貸の囲い込みは法律違反になりますか
広告料を上げれば他社が紹介してくれますか
両手仲介と片手仲介はどこが違うのですか
空室の部屋にも管理手数料はかかりますか
管理会社を変えるとき解約にはどれくらいかかりますか
