賃貸管理会社の囲い込みとは|空室が長引くときの見分け方
賃貸管理会社の囲い込みとは、他社経由の紹介が止まる状態のこと
「囲い込み」という言葉は、もともと不動産の売買で使われてきた言葉です。それが賃貸の場面にも転用され、オーナーさんの間で語られるようになりました。賃貸でいう囲い込みとは、物件を預かっている管理会社が、自社で入居者を決めたいために、他の仲介会社からの問い合わせを実質的に受け付けない状態を指します。
たとえば、他社の仲介会社が「◯◯アパートの201号室、まだ空いていますか」と電話をしたときに、実際は空いているのに「申込みが入っています」「今は紹介をお断りしています」と返される。あるいは、そもそも他社が案内するための図面や写真が用意されていない。こうした状態が続くと、部屋を探している人の目に触れる経路が細くなります。
- 囲い込み=空いているのに他社が紹介できない(しにくい)状態
- 電話口での断りだけでなく、資料が無い・ポータルに載っていないことでも同じ結果になる
- 賃貸には売買のような公的な情報登録の義務がなく、オーナーからは見えにくい
- 困るのは、空室期間が延びるオーナー側
よく語られる3つのパターン
オーナーさんから相談を受ける中で「囲い込みではないか」と言われる状況は、おおむね次の3つに分かれます。
- 断りの言葉で止まる…他社からの問い合わせに「申込みが入っています」「オーナー審査中です」と伝えられ、実際には空いたままになっている。
- 資料が無くて止まる…他社が入居希望者に見せられる写真・間取り図・設備一覧が用意されておらず、案内の準備ができない。
- 掲載が細くて止まる…自社サイトにしか出ていない、主要なポータルサイトに載っていないなど、そもそも他社が物件の存在を知る経路が少ない。
2つめと3つめは、誰かが意図して紹介を止めているわけではありません。それでも、部屋が決まらないという結果は同じです。
悪意の有無より「結果」で捉える
囲い込みという言葉には「隠れてやっている」という響きがあるため、つい「うちの管理会社は悪意があるのか」と考えてしまいがちです。ただ、オーナー側からその内心を確かめる手段はありません。つまり囲い込みは、悪意の有無よりも「結果として紹介経路が狭まっているかどうか」で捉えたほうが実務的です。
なぜ起きるのか|両手仲介と広告料という収益の仕組み

囲い込みが語られる背景には、賃貸仲介の収入の構造があります。まず、部屋が決まったときに仲介会社が受け取れるお金には、大きく分けて二つあります。
- 仲介手数料…入居者や貸主から受け取るもの。宅地建物取引業法にもとづく国土交通省告示(報酬額の告示)で、居住用建物の貸借の媒介は、貸主・借主から受け取る合計額が家賃1か月分+消費税が上限とされています。借主からは原則として0.5か月分+消費税が上限で、依頼を受けるにあたって承諾を得ている場合は1か月分+消費税まで受け取れます。
- 広告料(AD)…貸主(オーナー)が募集の広告宣伝費として支払うもの。金額や有無は物件ごとに異なります。
自社で決めたときと、他社が決めたときの違い
入居者を見つけたのが自社か他社かで、管理会社側の手取りが変わります。自社の店舗で決めれば、入居者からの仲介手数料と広告料の両方が自社に入ります。これがいわゆる「両手」の状態です。一方、他社が決めれば、広告料は他社に支払われ、入居者からの手数料も他社の収入になります。
| 成約の経路 | 入居者からの仲介手数料 | オーナーが払う広告料 | 管理会社側の受け取り |
|---|---|---|---|
| 管理会社が自社で決めた(両手) | 管理会社 | 管理会社 | 多くなりやすい |
| 他社の仲介会社が決めた(片手) | 他社 | 他社 | 少なくなりやすい |
この差があるため、「まず自社で決めたい」という動機が働きます。動機そのものは自然なことですが、それが強くなりすぎて他社の紹介を止めてしまうと、オーナーにとっては募集の窓口が減るだけになります。
管理手数料の受け取り方も動機に関わる
もうひとつ見落とされやすいのが、管理手数料の対象範囲です。空室を含む全戸数に対して手数料が発生する契約であれば、部屋が空いている間も管理会社の収入は変わりません。反対に、家賃が発生している部屋だけを対象とする契約であれば、空室が続くほど管理会社の収入も減ります。空室のコストを誰が負っているかは、募集への向き合い方に直結します。
売買の囲い込みとの違い|賃貸には情報登録の義務がない
売買では、専任媒介契約などを結ぶと、宅地建物取引業法により指定流通機構(レインズ)への登録と、依頼者への業務状況の報告が義務づけられています。登録されていれば、他社もその物件情報を見ることができます。だからこそ売買では「登録したのに紹介を断る」という行為が問題として扱われてきました。
一方、賃貸の募集や管理には、こうした公的な情報登録の義務がありません。どこに情報を出すか、どこまで他社に開示するかは、管理会社の運用に委ねられています。
| 売買(専任媒介など) | 賃貸の募集・管理 | |
|---|---|---|
| 情報の登録義務 | 宅建業法にもとづく義務あり | 法律上の義務はない |
| 依頼者への報告 | 法定の報告義務あり | 契約書の定めによる |
| オーナーからの見えやすさ | 登録の有無で確認しやすい | 確認方法を自分で決める必要がある |
売買側で強化された規制は、賃貸の募集には及ばない
売買の分野では、国土交通省「宅地建物取引業法の解釈・運用の考え方」の改正により、いわゆる物件の囲い込みが監督処分の対象として明確化されました(2025年1月1日施行)。これは売買の媒介と指定流通機構への登録を前提とした内容で、登録義務のない賃貸の募集にそのまま適用されるものではありません。賃貸のオーナーとしては、法令で守られる部分が少ないぶん、募集状況を自分で確認できる形を契約と運用でつくっておくことが現実的な対処になります。
囲い込みでオーナーに起きること|延びた空室期間はそのまま損失
囲い込みが問題になるのは、道義的な話だからではありません。空室期間が延びた分の家賃は、あとから取り戻せないからです。
金額に置き換えて考える
たとえば家賃6万円の部屋が1室、本来より3か月長く空いたとすると、それだけで18万円の収入が失われます。同じ状態の部屋が3室あれば54万円です。管理手数料の率を少し下げてもらうより、空室期間が1か月縮むことのほうが金額として大きくなる場面は珍しくありません。あくまで仮の計算ですが、自分の物件の家賃と空室数で置き換えてみると、優先順位がはっきりします。
家賃を下げる圧力につながっていく
- 空室期間が延びるほど、募集条件を下げたくなる圧力が強まる
- いったん家賃を下げると、次の更新・次の募集にも影響が残る
- 敷金・礼金・更新料など、家賃以外の条件も連動して崩れやすい
- 「他社にも紹介してもらえていたのか」は、あとからでは検証しづらい
家賃を下げる前に打てる手については、家賃を下げずに賃貸空室を埋める方法と見せ方もあわせて確認しておくと、判断の材料が増えます(当社が運営する記事です)。更新料など家賃以外の条件を見直すときの考え方は、賃貸の更新料の相場、オーナーが競合物件から確かめて判断するにまとめています。
囲い込みを疑うサイン|オーナーが自分で確かめる手順
「囲い込まれているかどうか」は、管理会社に直接たずねても水掛け論になりがちです。まずは公開されている情報から、オーナー自身で確かめられることがあります。
まず公開情報を見る
- スマートフォンで「地域名+間取り+家賃帯」と検索し、自分の物件が主要なポータルサイトに出てくるか確かめる
- 掲載されている写真の枚数・明るさ、間取り図の見やすさを、近隣の競合物件と並べて比べる
- 管理会社以外の仲介会社のサイトにも、自分の物件が掲載されているか探す
- 掲載内容(家賃・礼金・設備・ペット可否)が、今の募集条件と合っているか確認する
他社のサイトに1件も出てこない状態が続いているなら、意図の有無にかかわらず他社が紹介できる状態になっていない可能性があります。
管理会社に聞く質問
公開情報を見たうえで、次の内容を管理会社に確認します。口頭ではなくメールなど記録に残る形で聞くと、あとから経過をたどれます。
| 確認すること | 聞き方の例 |
|---|---|
| 掲載先 | どのポータルサイト・どの店舗網に情報を出しているか |
| 他社への開示 | 他社の仲介会社から問い合わせがあった場合、図面や写真を渡しているか |
| 反響の数 | 直近数か月の問い合わせ件数・内見件数はどれくらいか |
| 内見後の声 | 見たけれど決まらなかった人から、どんな理由が挙がっているか |
| 広告料の扱い | 他社が決めた場合の広告料はいくらで、誰が負担するか |
なお、身分を偽って他社を装い問い合わせるような確かめ方は、関係を損ねるうえに得られる情報も限られます。公開情報と記録に残るやり取りで積み上げるほうが、話し合いの材料になります。
囲い込みと「正当な自社優先」の線引きをどう考えるか
自社の店舗で先に紹介すること自体は、悪いことではありません。自社で決まれば手続きが早く、入居後の対応まで一貫することもあります。問題になるのは、それが他社の紹介経路を閉じる形になっているときです。次の三つの軸で切り分けると整理しやすくなります。
- 他社が紹介できる状態になっているか…写真・間取り図・設備情報・周辺情報がそろい、他社の営業担当が入居希望者に説明できる資料があるか。
- 募集の状況が報告されているか…問い合わせ件数、内見件数、他社からの反響が、月単位で共有されているか。
- 空室期間のコストを誰が負っているか…空室でも管理手数料が発生する契約か、家賃が発生している部屋だけの契約か。
三つめは特に重要です。空室でも管理料が入る契約だと、管理会社にとって空室が続くことの痛みが小さくなります。逆に、部屋が決まるまで管理手数料が発生しない形であれば、早く決めたいという点でオーナーと利害が一致します。当社・満室本舗は、部屋が決まるまで管理手数料をいただかない形をとっており(満室の物件は3か月無料)、入居者からの仲介手数料も0円で募集しています。仲介手数料を無料にする募集の考え方は、当社の記事賃貸仲介手数料無料は岡山の空室対策に効くのか|仕組みで判断するで仕組みから確認できます。
契約で決めておくこと|報告の中身と募集方法の取り決め
賃貸には法定の報告義務がないため、報告の中身は管理委託契約と日々の運用で決まります。これから契約する場合も、今の契約を見直す場合も、次の点を書面で確かめておくと、後から状況をたどれます。
- 募集情報をどこに掲載するか(ポータルサイト名・自社サイト・他社への開示範囲)
- 他社の仲介会社に図面や写真を提供するかどうか
- 報告の頻度と項目(問い合わせ件数・内見件数・反響の内容)
- 管理手数料の対象(全戸か、家賃が発生している部屋だけか)
- 広告料の上限と、誰の判断で決めるか
- 解約予告の期間と、違約金の有無
「専任」か「広く出すか」を自分で選ぶ
賃貸でも、募集を1社に任せる形と、複数の仲介会社に広く出してもらう形があります。1社に任せる場合は、その会社の店舗網と発信力がそのまま募集力になります。広く出す場合は経路が増える代わりに、情報の更新や問い合わせ対応の窓口を整理しておく必要があります。どちらが良いというより、どちらの形をとっているかをオーナーが把握できていることが大切です。
報告書は「数字が残るか」で見る
「頑張って募集しています」という言葉だけでは、経過を検証できません。件数や日付が残る形で受け取れていれば、条件を見直すべきか、見せ方を変えるべきかの判断がしやすくなります。当社では毎月の定期報告書(集金レポート・点検報告)をお渡ししています。
囲い込みが起きにくい募集の形をつくる

他社に「紹介しないでください」と言わせないためには、他社が紹介したくなる状態を先につくることが、結果として経路を広げます。当社が岡山市・倉敷市の現場で空室の原因を点検すると、囲い込み以前に、次のような理由で他社が案内をあきらめているケースが実際にあります。
- 写真の枚数が足りない、スマートフォン撮影でぼやけている
- 間取り図が古い・手書き・白黒のまま
- SUUMOなど主要なポータルに掲載されていない
- ゴミ置き場や駐車場の配置、インターネット環境などの情報が資料に無い
- 共用部にクモの巣やチラシがたまり、内見時の印象が悪い
- 室内にコンロの油汚れ・鏡のうろこ・臭いが残っている
- テレビモニターホン・宅配ボックス・無料Wi-Fiなど、周辺の競合にある設備が無い
当社が実際に行った改善の例
他社から「家賃を下げるしかない」と言われていた長期空室の物件で、建築用カメラによるプロ撮影(当社は無料で対応しています)と、ゴミ置き場・駐車場配置図・ライフライン情報まで載せた物件専用ホームページを用意したところ、反響が増えて1か月で満室になった例があります(※結果は物件の立地・状態により異なります)。他社の担当者がそのページをそのまま入居希望者に見せられるため、紹介のハードルが下がったことが大きな要因でした。
また、岡山市北区津高の築30年・25部屋のRC造アパート(1K・バストイレ別・オートロック)では、相談時に13部屋が空室でした。募集条件の見直し、予算を抑えたリフォームと清掃、入居者の仲介手数料0円、ポータル掲載の改善、社会人女性にターゲットを絞った内装という組み合わせで、6か月で満室になっています(※結果は物件の立地・状態により異なります)。紹介経路を広げることと、紹介したくなる中身を整えることは、セットで効きます。
費用をかけずにできる順番
すべてを一度にやる必要はありません。お金がかからないものから順に手をつけると、どこで詰まっているかも見えてきます。
- 共用部の清掃とポストのチラシ処分、ゴミ置き場の整理
- 写真の撮り直しと掲載枚数の追加、間取り図の作り直し
- ポータルサイトへの掲載内容の見直し(設備一覧・周辺情報の追記)
- 他社の営業担当が説明に使える資料(設備一覧・配置図・ライフライン情報)の整備
- 費用対効果を見たうえでの部分的なリフォーム(全面改修ではなく塗装・部品交換など)
退去時の原状回復とリフォームの線引きに迷ったときは、当社の記事原状回復のガイドラインで大家負担になる範囲と、経過年数の考え方が参考になります。駐車場の空き区画が残っている場合の扱いは、アパートの駐車場経営、空き区画を外部に貸す前の確認点にまとめています。
状況が変わらないとき|見直しの基準と切り替えにかかるもの
掲載内容や見せ方を整え、報告も受け取ったうえで、それでも募集の動きが変わらない場合は、体制そのものを見直す段階に入ります。感情ではなく、確認した記録をもとに判断するのがよいと思います。
見直しを検討する場面
- 他社のサイトに一度も物件が掲載されず、理由の説明も得られないとき
- 問い合わせ件数・内見件数の報告を求めても出てこないとき
- 提案が家賃の値下げに偏り、見せ方や設備の改善が出てこないとき
- オーナーの知らない費用が請求に含まれていたとき
切り替えの費用と期間
管理会社を変える場合、気になるのは費用と手間です。当社が拝見してきた管理委託契約では、解約予告を3か月前と定めているものが多く、申し出から実際の切り替えまでその程度の期間がかかります。違約金の有無や精算方法は契約書の記載によって変わるため、まず解約条項を読み返してください。当社にご依頼いただく場合、現管理会社とのやり取りや入居者への通知手続きは当社が代行しますので、オーナーさまの作業は解約書類への署名が中心になります。管理開始までは契約後おおむね3か月程度で、その間に撮影と物件専用ホームページの制作を進めます。
判断の基準は当社の記事空室が続くとき管理会社を変更するタイミングと判断基準に、かかるお金の内訳は賃貸管理会社の乗り換え費用|違約金と実費の見方がわかるにまとめています。建物の状態や年数から保有そのものを考え直す段階であれば、アパート売却のタイミング|満室か空室かで変わる判断材料も選択肢の整理に使えます。
自分の物件がどのくらい長期空室になりやすい状態かを先に把握したい場合は、質問に答えるだけで確認できる当社の空室長期化リスク診断(無料)もご利用いただけます。
よくある質問
賃貸の囲い込みは法律違反になりますか
広告料を上げれば他社が紹介してくれますか
両手仲介と片手仲介はどこが違うのですか
空室の部屋にも管理手数料はかかりますか
管理会社を変えるとき解約にはどれくらいかかりますか
