アパート売却のタイミング|満室か空室かで変わる判断材料
アパートの売却を考え始めると、「今売るべきか、もう少し持つべきか」で迷いやすくなります。ただ、売却のタイミングは相場の上下だけで決まるものではありません。ここでは岡山市・倉敷市で賃貸管理と空室対策を行っている満室本舗(株式会社ログリンク)が、日ごろオーナー様からご相談をいただく内容をもとに、築年数・空室状況・修繕予定という手元で確認できる材料から売り時を組み立てる考え方を整理します。なお、当社は宅地建物取引業者・賃貸住宅管理業者であり、税務や登記の個別の判断は税理士・司法書士にご確認ください。
アパートの売却タイミングは「時期」より「物件の状態」で決まります

売却のタイミングを決める最も大きな要素は、季節や年度ではなく、その物件が今どんな状態にあるかです。買主は、購入後に自分がいくら家賃を受け取れて、いくら支出するのかを見て価格を判断します。つまり、入居状況・築年数・これから必要になる修繕の3点が、そのまま売却条件に反映されやすくなります。
売り時とは「相場が良い時期」ではなく、「この物件の条件を一番よく説明できる状態が整った時」だと考えると判断しやすくなります。
- 入居状況:満室に近いか、空室が続いているか
- 築年数:買主が金融機関から融資を受けやすい年数かどうか
- 修繕:外壁・屋根・給湯器など、次の大きな支出が近いかどうか
- 所有期間:税の区分が変わる節目を越えているかどうか
- 自分の目的:現金化を急ぐのか、収益をもう数年取りたいのか
この5つを書き出したうえで、「どれが一番動かせないか」を見ると、売却時期はかなり絞り込めます。たとえば大規模修繕の見積もりが手元にあるなら、その支出の前か後かで話は大きく変わります。
満室で売るか、空室で売るか

収益物件としてのアパートは、原則として満室に近いほど買主に説明しやすくなります。ただし空室が多い状態にも別の売り方があり、どちらが有利かは物件の立地と買主層によって変わります。
満室に近い状態で出すとき
満室に近い物件は、実際に入っている家賃をもとに収支を説明できるため、投資家である買主が判断しやすくなります。買主は自分の資金計画を立てやすく、金融機関に提出する資料も作りやすくなります。一方で、次の点は事前に整理しておく必要があります。
- 各部屋の契約日・家賃・敷金の一覧(レントロール)に食い違いがないか
- 相場より高い家賃で入っている部屋があり、退去後に下がる可能性はないか
- 入居者の入れ替わりが近い部屋がどれくらいあるか
買主は「この家賃がいつまで続くか」を見ています。満室であることより、その家賃が退去後も再現できるかのほうが、実は重く見られます。
空室が多い状態で出すとき
空室が多い物件は、現状の家賃収入で価格を説明しにくくなります。買主は「自分で埋められる」と考えた分だけ安く買おうとするため、価格交渉の余地が広がりやすい点は理解しておく必要があります。ただし、次のような場合は空室のまま売る判断にも理由があります。
- 建物の傷みが進み、埋めるために大きな費用がかかると見込まれる場合
- 買主が建物を解体して土地として使う前提で検討している場合
- 相続や資金の都合で、時期を動かせない事情がある場合
逆に、空室の原因が募集のやり方や室内の見え方にあるなら、売る前に手を打てる余地が残っています。原因が分からないまま値下げ交渉に応じると、下がった価格がそのまま売却額になります。
一部だけ空室が残っているとき
実務でいちばん多いのは、満室でも全空でもない「数室だけ空いている」状態です。この場合は、空いている部屋の募集条件と室内の状態を整えてから売却活動に入るほうが、買主への説明がそろいます。募集資料の写真が暗い、間取り図が古いといった理由で反響が止まっている物件は、売却資料の見え方も同じ問題を抱えていることが少なくありません。
築年数から逆算する|買主のローンが組めるかどうか
築年数が売却タイミングを左右するのは、買主が金融機関から借りられる期間に影響するためです。建物の法定耐用年数は「減価償却資産の耐用年数等に関する省令」で定められており、住宅用の建物では木造・合成樹脂造が22年、鉄骨鉄筋コンクリート造・鉄筋コンクリート造が47年とされています。金融機関がこの年数を融資期間の目安のひとつとして見ることがあるため、築年数が進むほど買主の候補が絞られていく傾向があります。
- 木造アパートは、耐用年数を超えると現金購入や短期返済を前提とする買主が中心になりやすい
- 買主の返済期間が短くなると、その分だけ提示される価格は下がりやすい
- 構造によって事情が異なるため、自分の物件の構造を先に確認する
ここで大事なのは、築年数は毎年必ず進むということです。「もう少し様子を見る」という判断は、買主の候補が少しずつ減っていく方向に働きます。持ち続けて家賃収入を取る利益と、買主層が狭まる影響の両方を並べて考える必要があります。
修繕の予定から逆算する|次の大きな支出の前か後か
売却タイミングを具体的な時期に落とし込むとき、最も手がかりになるのが修繕の予定です。外壁塗装、屋根の防水、給排水設備、給湯器の交換といった支出は金額が大きく、実施するかどうかで手元に残る金額が変わります。
- 直前に大きな修繕を終えても、その費用がそのまま売却価格に上乗せされるとは限りません。買主は「あと何年もつか」で見ます
- 逆に、近いうちに必要になる修繕があると、買主はその費用を見込んで価格を提示してきます
- 見積書や過去の工事履歴が残っていると、買主に説明しやすくなります
判断が難しいのは、費用対効果の見えにくい工事です。当社では全面改修ではなく、塗装や部品交換で見え方が変わる範囲から提案することがありますが、これは売却前に限らず、支出に対する回収の見込みを優先する考え方です。給湯器のように部屋ごとに発生する設備費用については、当社の記事「アパート 給湯器 交換 費用|見積書で見る3つの変動要因」で見積書の読み方を整理していますので、手元の見積りと見比べる材料にお使いください。
税金と費用の面で、先に確認しておくこと
売却時期の検討では、所有期間によって税の扱いが変わる点を必ず確認しておく必要があります。国税庁のタックスアンサー(No.3208 長期譲渡所得の税額の計算)では、土地や建物を売ったときの譲渡所得は、譲渡した年の1月1日時点で所有期間が5年を超えるかどうかで長期と短期に区分されるとされています。取得した日から数えるのではなく「売った年の1月1日時点」で判定される点が、実務では見落とされやすいところです。
- 譲渡所得の区分は、売却する年によって変わることがある
- 仲介手数料、登記費用、測量費など、売却にともなう費用も見込んでおく
- 相続で取得した物件は、取得日の扱いなど個別の論点が増える
実際にいくらの税額になるか、どの特例が使えるかは、取得時の資料や他の所得との関係で変わります。ここは必ず税理士にご確認ください。相続したアパートや実家が絡む場合は、名義の整理から順番を組む必要があり、当社の記事「相続した空き家の売却|名義を整える順番と、貸す選択との比べ方」も参考にしていただけます。
売る前に「空室を埋めてから」を検討するという選択
売却の理由が「空室が埋まらないから」である場合、当社ではまず空室の原因を確認することをおすすめしています。原因が募集のやり方にあるなら、売却の前に条件を整え直す余地が残っているためです。
当社が現場で見てきた長期空室の原因には、写真の枚数が少ない・スマホ撮影でぼやけている、間取り図が古く白黒のまま、SUUMOに掲載されていない、共用部にチラシが溜まりゴミ置き場が散らかっている、室内の汚れや臭いが残っている、といったものがあります。家賃が高すぎるという理由より先に、こうした点で候補から外れていることが少なくありません。
満室本舗では、プロカメラマンによる物件写真の撮影、物件専用ホームページの制作、募集資料・チラシの制作、SUUMO上位PR枠への掲載代行を無料で行っています。また、部屋が決まるまで管理手数料をいただかない仕組みにしており、空室のあいだに管理料が発生しません。空室をなくすことが当社の収益にも直結するため、オーナー様と利害が一致する形をとっています。
過去には、13室が空いていた岡山市北区の築30年RC造アパートで、募集条件の見直し、費用を抑えたリフォームと清掃、入居者の仲介手数料0円、ポータル掲載の改善、社会人女性に絞った内装の組み立てを行い、6か月で満室となった物件があります(※結果は物件の立地・状態により異なります。同じ成果をお約束するものではありません)。
売らずに立て直す道を検討する場合、管理の体制そのものを見直すことが出発点になることもあります。手順は当社の記事「賃貸の管理会社変更|デメリットを防ぐ手順で進める」にまとめています。また、収支が合わなくなった物件の考え方については「不動産投資はやめとけと言われる理由と立て直し方」もあわせてご覧ください。いずれも当社サイト内のページです。
売ると決めてからの段取り
売却すると決めたあとは、資料をそろえる順番で進めやすさが変わります。次の順で手をつけると、買主への説明がそろいやすくなります。
- 登記事項証明書、公図、建築確認関係の書類など、物件の基本資料を集める
- 各部屋の契約内容(契約日・家賃・敷金・更新時期)を一覧にする
- 過去の修繕履歴と、今後見込まれる修繕の見積りを整理する
- ローン残高と、繰上返済にともなう手数料の有無を金融機関に確認する
- 譲渡所得の区分や特例の適用について税理士に相談する
- そのうえで、売却価格の査定と募集方法を検討する
資料が整っていない状態で査定だけを先に取ると、前提が違うまま数字が一人歩きしがちです。レントロールと修繕履歴の2つは、最初にそろえておく価値があります。
よくある質問
アパートは満室のときに売るほうが高く売れますか
築年数が古いアパートは売りにくくなりますか
大規模修繕をしてから売るほうがよいのでしょうか
売却にかかる税金は誰に相談すればよいですか
空室が多い物件でも、売る以外の選択肢はありますか
