相続した空き家の売却|名義を整える順番と、貸す選択との比べ方
親から実家を相続したものの、誰も住まないまま空き家になっている。片付けも名義もそのままで、何から手をつけたらいいのか分からない――岡山市・倉敷市で空き家のご相談をいただくとき、最初に聞くのはたいていこの状態です。売却そのものは珍しい手続きではありませんが、順番を間違えると、買主が見つかってから止まってしまうことがあります。この記事では、名義の整理から売り方の選択、貸すという選択肢との比べ方までを、判断材料の形で並べていきます。
相続した空き家は、名義を整えるまで売却できません

売却の第一歩は、リフォームでも査定でもなく、名義を亡くなった方から相続人へ移すことです。不動産の売買契約は所有者本人が結ぶものなので、登記簿上の名義が被相続人のままでは、買主が決まっても引き渡しに進めません。まずは登記簿(登記事項証明書)を法務局で取り、現在の名義と、抵当権などが残っていないかを確認するところから始めます。
遺産分割協議と相続登記の順番
遺言書がない場合、誰がその不動産を引き継ぐかを相続人全員で話し合い、遺産分割協議書にまとめます。この合意ができていないと、相続登記も売却も前に進みません。順番としては次のようになります。
- 相続人を確定する(被相続人の出生から死亡までの戸籍をそろえる)
- 遺言書の有無を確認する
- 不動産を含む遺産の内容を洗い出す
- 遺産分割協議で、その空き家を誰が取得するかを決める
- 相続登記を申請し、名義を相続人に移す
- 売却活動を始める
相続人が複数で共有名義にする方法もありますが、売却の場面では全員の署名・押印と意思確認が毎回必要になります。遠方に住む相続人がいる場合は、この手間が思った以上に負担になります。売る前提がはっきりしているなら、代表者一人の名義に寄せてから動くほうが手続きは単純です。どの分け方が適しているかは相続人ごとの事情で変わるため、具体的な判断は司法書士や弁護士にご相談ください。
相続登記は2024年4月から申請が義務になりました
不動産登記法の改正により、相続登記の申請は義務化されています。法務省の案内によると、相続によって不動産を取得したことを知った日から3年以内に申請する必要があり、正当な理由なく怠った場合は10万円以下の過料の対象とされています(不動産登記法第76条の2、第164条/2024年4月1日施行)。この義務は施行前に発生した相続にも及びます。遺産分割の話し合いがまとまらないときは、相続人申告登記という簡易な手続きで義務を果たす方法も用意されています。
名義変更にいくらかかるかを先に把握しておきたい方は、当社が書いた不動産の名義変更の費用|相続・贈与・売買で比べるもあわせてご覧ください。
- 登記簿の名義が被相続人のままだと、売買契約も引き渡しもできない
- 遺産分割協議 → 相続登記 → 売却、の順番は動かせない
- 相続登記の申請は義務化済み(2024年4月1日施行・取得を知った日から3年以内)
- 共有名義は、売却時に全員の手続きが毎回必要になる
- 誰がどう相続するかの個別判断は司法書士・弁護士へ
売却までの流れを、先に全体で見ておく
名義が整ったあとの流れは、一般的な中古住宅の売却とほぼ同じです。全体像を先に見ておくと、いま自分がどこにいるのかが分かります。
- 権利証・登記事項証明書・固定資産税納税通知書・測量図などの書類を集める
- 残置物(家財)の量を確認し、片付けの方針を決める
- 境界標の有無を現地で確認する
- 複数の不動産会社に査定を依頼し、価格の根拠を聞く
- 仲介で売るか、買取で売るかを決める
- 媒介契約を結び、募集を開始する
- 売買契約 → 決済・引き渡し
- 翌年の確定申告(譲渡益が出た場合など)
このうち見落とされやすいのが境界の確認です。古い住宅地では境界標が失われていたり、隣地の塀が越境していたりすることがあり、測量や隣地との立会いが必要になると、その分だけ引き渡しまでの期間が延びます。査定を受ける段階で「測量は必要そうか」を必ず聞いておくと、後から慌てずに済みます。
仲介と買取は、優先するものが違う
売り方は大きく二つです。仲介は不動産会社が買主を探す方法で、市場価格に近い金額を狙えるかわりに、買主が現れるまでの期間が読めません。買取は不動産会社が直接買い取る方法で、期間の見通しは立ちやすい一方、価格は仲介より低くなるのが一般的です。相続人が複数いて早く現金化したい場合と、時間をかけてでも金額を優先したい場合とで、答えは変わります。買取を検討するなら、当社が書いた空き家 買取 業者に依頼する前に、仲介との違いと見積もりの確認項目で確認項目を整理しています。
売る前に手を入れるか、そのまま売るか

結論から言えば、相続した空き家では、大がかりなリフォームをしてから売る判断は慎重に検討したほうがよい場面が多いです。かけた費用がそのまま売却価格に上乗せされるとは限らず、中古住宅を探している買主が自分の好みで直したいと考えている場合もあるためです。
費用をかけずに効く順に手を入れる
手を入れるかどうかの判断は、「買主が見に来たときに、判断を鈍らせる要素があるか」で考えると整理しやすくなります。優先度が高い順に並べると次のようになります。
- 残置物の撤去(家財が残っていると部屋の広さも状態も伝わらない)
- 清掃と換気(臭い・水回りの汚れは印象に直結する)
- 草木の刈り込みと敷地まわりの片付け(外観が第一印象になる)
- 雨漏り・シロアリなど、放置すると悪化する不具合の確認
- 設備の交換や内装の張り替えは、査定価格への反映を聞いてから判断
片付けと清掃は費用に対して写真映りが変わりやすい一方、内装の全面改修は回収できるかどうかが読めません。当社が賃貸の空室対策で見ているのも同じ構図で、全面改修よりも塗装や部品交換で印象を整えるほうが、費用対効果の見通しが立てやすいと考えています。片付け・解体・売却にかかる費用の内訳は、当社の実家じまいの費用|片付け・解体・売却の目安を知るにまとめています。
解体して更地にすべきか
建物が古く、買主が土地として使う可能性が高い場合は、解体も選択肢に入ります。ただし解体には費用がかかるうえ、住宅が建っている土地に適用されている固定資産税の住宅用地特例は、建物を壊すと適用されなくなります(地方税法第349条の3の2)。翌年度の税額が変わる点は、解体の時期を決める前に確認しておきたいところです。
また、売り方によって解体の要否は変わります。更地を前提に買いたい買主もいれば、古家付き土地のまま買って自分で解体したい買主もいます。解体費用を自分で負担するか、価格に反映させて古家付きで売るかは、査定時に両方のパターンで聞いてみてください。自治体によっては解体の補助制度がある場合もあるため、当社の空き家の解体の補助金|自治体制度の探し方と申請手順がわかるで探し方を確認したうえで、お住まいの自治体の公式ページで最新の要件をご確認ください。
「売る」と「貸す」、どちらが向くかを比べる材料

相続した空き家は、売る以外に貸すという選択肢もあります。どちらが向くかは、建物の状態と立地、そして相続人がその不動産に関わり続けられるかどうかで決まります。
| 比べる点 | 売る | 貸す |
|---|---|---|
| 手元に入るお金 | 一度にまとまって入る | 毎月少しずつ入る(空室の月は入らない) |
| 初期費用 | 片付け・清掃・仲介手数料など | 片付けに加え、住める状態にする工事費 |
| その後の手間 | 引き渡しで終わる | 入居者対応・修繕・確定申告が続く |
| 所有し続けるコスト | なくなる | 固定資産税・保険料・管理費が続く |
| 相続人が複数の場合 | 現金で分けやすい | 収入と負担の分け方を決める必要がある |
判断の分かれ目は、貸せる状態にするための工事費を、何年分の家賃で回収する計算になるかです。水回りの交換まで必要な建物で、周辺の家賃相場が低い地域であれば、回収の見通しは立ちにくくなります。逆に、大きな傷みがなく賃貸需要のある場所であれば、貸しながら様子を見る判断もあり得ます。住む・貸す・売るの決め方は、当社の実家 空き家 どうする|住む・貸す・売るを決める4つの材料で詳しく整理しています。
当社が扱っている範囲について
満室本舗(株式会社ログリンク)は、宅地建物取引業(岡山県知事(1)第5933号)と賃貸住宅管理業(国土交通大臣(1)第001348号)の両方の登録があり、売買と賃貸管理のどちらも扱っています。そのため「売ったほうがいいのか、貸したほうがいいのか」を、どちらか一方に寄せずに一緒に検討できます。空き家を活用する場合は、再生費用の負担割合が異なる3つのプラン(負担0/50/100)を用意しており、契約期間は3〜15年です。対応エリアは岡山市・倉敷市で、ご相談の電話は086-250-7130(10:00〜18:00、水・日・祝休)で受けています。どの選択が適しているかは建物の状態と立地によって変わるため、結果をお約束するものではありません。
すぐに結論を出さず、しばらく空き家のまま維持する場合は、遠方からでも頼める管理サービスがあります。当社の空き家 管理 サービス、遠方の実家で頼める作業と費用を整理するで、頼める作業の範囲をご確認ください。
かかる費用と税金の目安
売却で出ていくお金は、登記・仲介・片付けの三つが柱になります。金額が法令で決まっているものと、見積もりで初めて分かるものがあるので、分けて考えると把握しやすくなります。
| 項目 | 内容 | 考え方 |
|---|---|---|
| 登録免許税(相続登記) | 固定資産税評価額の0.4%(登録免許税法別表第一) | 法令で決まっている |
| 司法書士報酬 | 相続登記の代行 | 依頼先により幅がある。見積もりで確認 |
| 仲介手数料 | 売買価格400万円超は「価格×3%+6万円」+消費税が上限(宅地建物取引業法・報酬告示) | 上限額。800万円以下の低廉な空家等は33万円(税込)まで受領可(2024年7月1日施行の告示改正) |
| 印紙税 | 売買契約書に貼付。契約金額により変動(国税庁) | 契約金額で決まる |
| 残置物の撤去 | 家財の量と搬出のしやすさによる | 複数社の見積もりで比較 |
| 測量・境界確定 | 境界が不明確な場合に必要 | 必要かどうかを査定時に確認 |
| 解体費 | 構造・面積・接道状況による | 複数社の見積もりで比較 |
税金については、譲渡益が出た場合に譲渡所得税・住民税がかかります。また国税庁には「被相続人の居住用財産(空き家)を売ったときの特例」(タックスアンサーNo.3306)という制度があり、一定の要件を満たす場合に譲渡所得から最高3,000万円を控除できるとされています。ただし建築時期・居住状況・売却期限・売却代金の上限など要件が細かく、適用できるかどうかは個別の事情によって変わります。当社は宅地建物取引業者であり税務の判断はできませんので、適用の可否や申告の方法は税理士または所轄の税務署にご確認ください。期限が定められている制度なので、売却時期を決める前に相談しておくことをおすすめします。
相続した空き家の売却でつまずきやすいところ
売却が途中で止まる原因は、価格よりも準備の抜けにあることが多いです。あらかじめ把握しておくと、進め方を先に組み立てられます。
- 相続人の一人と連絡が取れない――遺産分割協議が成立せず、登記も売却も進められません。早い段階で全員の所在と意向を確認します
- 権利証や測量図が見つからない――代わりの手続きで対応できる場合もあるので、司法書士に相談します
- 境界が確定していない――測量と隣地立会いが必要になり、引き渡しまでの期間が延びます
- 家財が残ったまま査定を受ける――部屋の状態が伝わらず、写真も撮れません
- 火災保険や電気・水道を止めたままにしている――内見時に水が出ない、照明がつかないと室内を確認できません
- 査定額の根拠を聞かないまま一社に任せる――近隣の成約事例をもとにした説明があるかを確認します
売却の早さを決めるのは、価格の設定よりも、買主が判断に必要な情報をそろえられているかどうかです。登記・境界・室内の状態という三つが説明できる状態になっていれば、話は前に進みやすくなります(結果は物件の立地や状態により異なります)。
よくある質問
相続登記をしないまま、空き家を売ることはできますか
空き家は売る前にリフォームしたほうが高く売れますか
建物を解体して更地にしてから売ったほうがよいのでしょうか
相続した空き家を売るか貸すかは、何を基準に決めればよいですか
空き家を売ったときの税金の特例は、自分でも使えますか
