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2026年10月13日

賃貸契約を結ぶ前に|貸主が確かめる契約書の項目と敷金の扱い

賃貸契約は「貸主が決めた条件」を文書にしたもの

賃貸契約(賃貸借契約)は、貸主と借主が部屋の使い方・お金・終わり方を取り決めた約束を書面にしたものです。入居者を募集する段階で決めた家賃や敷金、禁止事項、解約の予告時期は、そのまま契約書に載ります。つまり賃貸契約は、募集条件を決めた時点でほぼ中身が決まっています。

オーナーの立場で押さえておきたいのは、次の3つの場面です。

  • 募集前…契約の型(普通借家か定期借家か)、家賃・敷金・礼金・更新料、ペットや楽器などの条件を決める
  • 契約時…重要事項説明と契約書の署名、鍵と初期費用のやり取り
  • 終わるとき…解約の予告、原状回復の負担分け、敷金の精算

仲介会社や管理会社が実務を進める場合でも、条件を決める権限はオーナーにあります。書面に何が書かれているかを把握しておくと、入居後のやり取りで迷いにくくなります。

普通借家契約と定期借家契約の違い

普通借家契約と定期借家契約の違いを更新・終了方法・契約方法・期間で比較した図

貸主がまず選ぶのは、期間満了で確実に終わる契約にするかどうかです。これが普通借家契約と定期借家契約の分かれ目になります。

それぞれの仕組み

普通借家契約 定期借家契約
根拠 借地借家法26条〜28条 借地借家法38条
更新 原則として更新される(法定更新あり) 更新はなく、期間満了で終了
貸主から終わらせる 正当の事由が必要 期間満了で終了(再契約は当事者の合意による)
契約の方法 口頭でも成立するが書面が通常 書面による契約に加え、更新がない旨を記載した書面での事前説明が必要
期間 1年未満だと期間の定めのない契約とみなされる 1年未満の期間も定められる

普通借家契約では、期間満了の1年前から6か月前までの間に更新しない旨の通知をしないと、従前と同じ条件で更新されたものとみなされます(借地借家法26条)。さらに貸主からの更新拒絶や解約申入れには正当の事由が求められます(同法28条)。期間を区切ったつもりでも、普通借家では自動的に続いていくという点は押さえておきたいところです。

定期借家を選ぶときの注意

定期借家契約は、事前説明の書面が抜けていると「更新がない」という定めが無効になる扱いになります。建て替えや売却の予定がある、親族がいずれ使う予定があるといった事情がある物件では検討の余地がありますが、借主にとっては期間が区切られる分、募集時の条件としては不利に働くこともあります。期間1年以上の定期借家では、期間満了の1年前から6か月前までの間に終了の通知が必要です(同法38条)。

契約書で貸主が確認したい項目

賃貸借契約書で貸主が確認する7項目を示した図解

契約書の雛形は管理会社や仲介会社が用意することがほとんどですが、オーナーが目を通すべき箇所は限られています。国土交通省が公表している「賃貸住宅標準契約書」は条文と解説がセットで公開されており、自分の物件の契約書と見比べる材料になります。

  • 契約の型(普通借家/定期借家)と期間、更新の条件
  • 家賃・共益費の額と支払期日、滞納時の扱い
  • 敷金の額と、返還・充当のルール
  • 借主からの解約予告をいつまでにするか
  • 原状回復の負担区分(通常損耗を借主負担にしていないか)
  • 禁止・制限事項(ペット、楽器、同居人、事務所利用など)
  • 設備の修繕を誰が行うか(エアコン・給湯器などの故障時)

解約予告の期間はどこで決まるか

期間の定めのない建物賃貸借では、借主からの解約申入れは3か月前(民法617条1項2号)、貸主からの解約申入れは6か月前で終了します(借地借家法27条)。実務では借主からの予告を1か月前とする特約を置く契約書が多く見られます。予告期間が短いほど借主は動きやすく、長いほど空室の発生を事前につかみやすくなります。予告期間は、次の募集をいつから始められるかを決める条項です。

修繕の分担

設備の故障時に誰が直すかが曖昧だと、入居中のやり取りがもつれます。貸主が設置した設備は貸主が修繕するのが原則で、借主の使い方に原因がある場合は借主負担、という線引きを契約書に明記しておくと判断の基準になります。

原状回復と敷金のルール

原状回復の負担は、法令とガイドラインでおおよその線が引かれています。貸主が自由に決められる範囲は、思っているより狭いと考えておくほうが実態に合います。

2020年4月施行の改正民法621条では、借主は通常の使用により生じた損耗と経年変化については原状回復義務を負わないと明文化されました。敷金についても民法622条の2で、賃貸借が終了して明け渡しがあったときに、未払賃料などを差し引いた残額を返すものと定められています。

具体的な線引きは、国土交通省「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン(再改訂版・平成23年8月)」が参考になります。ガイドラインでは、日照による畳の変色や家具設置によるへこみは貸主負担、タバコのヤニや掃除を怠ったことによる汚れは借主負担といった考え方が示されています。

  1. 入居前に室内の状態を写真で記録しておく
  2. 契約時に設備・傷のチェックシートを借主と共有する
  3. 退去立会いで、入居時の記録と見比べて負担を分ける
  4. 精算内容を書面にして渡す

借主負担の特約を設けること自体は否定されていませんが、内容が借主に一方的に不利だと判断されれば効力が争われます。記録を残しておくことが、結果的にいちばん単純な備えになります。

契約が成立するまでの流れと費用

募集から契約までの流れは、オーナーが関わる場面と仲介会社が進める場面が分かれています。全体像をつかんでおくと、どこで判断を求められるかが見えてきます。

  1. 募集条件を決める(家賃・敷金・礼金・入居条件)
  2. 仲介会社が募集・内見対応を行う
  3. 入居申込を受け、入居審査と保証会社の審査を行う
  4. 宅地建物取引士による重要事項説明(宅建業法35条)
  5. 契約書の署名・初期費用の入金・鍵の引き渡し

仲介手数料の上限

居住用建物の賃貸借の媒介では、宅地建物取引業者が受け取れる報酬は借賃の1か月分+消費税が上限で、依頼者の一方から受け取れるのは原則としてその2分の1までと定められています(宅地建物取引業法46条、昭和45年建設省告示第1552号)。媒介の依頼を受けるにあたって承諾を得ている場合は、一方から1か月分まで受け取れます。誰がいくら負担するかは、募集条件の一部としてオーナーが決められる部分です。

当社(満室本舗・株式会社ログリンク/岡山県知事(1)第5933号)では、入居者の仲介手数料を0円にして募集する取り扱いをしています。入居者の初期費用が下がる分、同じ家賃帯の他物件と比べられたときの条件差になりますが、どの程度反響が変わるかは立地や時期によって異なります。

契約条件を見直すときの順番

空室が続くときに契約条件を見直す順番を示したフロー図

空室が続くとき、最初に家賃を下げるのではなく、契約条件のどこが相場とずれているかを確かめるところから始めます。家賃は一度下げると戻しにくく、既存入居者との公平さにも関わるためです。

確認する順番

  1. 家賃・共益費が周辺の同等物件と比べてどの位置にあるか(家賃相場の調べ方|空室が続くとき、下げる前の見直し順)
  2. 敷金・礼金・更新料・保証会社費用など、初期費用の総額
  3. ペット可・楽器可・二人入居可など、入居できる人の範囲
  4. 募集図面の写真枚数、間取り図の見やすさ、ポータルサイトへの掲載状況
  5. 共用部と室内の状態(アパート共用部の印象改善|入居が決まる内見前の点検順)

当社が岡山市・倉敷市で相談を受ける中では、「なぜ空室なのか」の原因が把握できていないまま値下げだけが検討されている場面がよくあります。写真がスマホ撮影でぼやけている、間取り図が古い、ポータルサイトに載っていない、といった募集側の問題が残っていることも少なくありません。条件を変える前に、条件が正しく伝わっているかを確かめる順番になります。

サブリース(一括借り上げ)で貸している場合は、オーナーと転貸事業者の間の契約が別にあり、解約の条件が通常の賃貸契約とは異なります。詳しくは当社の記事「サブリースの解約方法|オーナーが契約書で見る5項目」で取り上げています。

管理会社に任せる範囲を決める

契約の実務を誰がどこまで担うかは、管理委託契約の内容で決まります。オーナーは「自分で決めること」と「任せること」を分けておくと、判断が必要な場面を取り違えません。

  • 募集条件の決定・入居審査の最終判断…オーナーが決める部分
  • 募集活動・重要事項説明・契約書の作成…宅地建物取引業者が行う部分
  • 家賃の集金・滞納対応・建物の保守…賃貸住宅管理業者が行う部分

仲介と管理では必要な登録・免許が異なります。確認の仕方は当社の記事「宅建業者と管理業者の違い|大家が見る免許番号の読み方」にまとめています。当社は宅地建物取引業者(岡山県知事(1)第5933号)と賃貸住宅管理業者(国土交通大臣(1)第001348号)の両方の登録を受けており、募集から入居後の対応まで一社で引き受けています。管理手数料は家賃が発生している部屋にのみかかる形で、空室の部屋には管理手数料をいただいていません。

なお、税金や登記、個別の契約トラブルの法的な判断については、税理士・司法書士・弁護士など、それぞれの専門家へご相談ください。当社がお答えできるのは宅地建物取引業・賃貸住宅管理業の範囲です。

自分の物件で何から見直せばよいか迷うときは、当社の空室長期化リスク診断(無料・質問に答える形式)や、無料相談で聞かれること|空室に悩む大家の準備資料もあわせてご覧ください。

よくある質問

普通借家契約と定期借家契約は、貸主にとってどちらが有利ですか
どちらが有利かは物件の事情によって変わります。普通借家契約は借地借家法26条により期間満了でも原則として更新され、貸主からの更新拒絶には28条の正当の事由が必要です。定期借家契約は同法38条にもとづき期間満了で終了しますが、書面による契約と、更新がない旨を記載した書面での事前説明が必要で、これを欠くと更新のない定めが効力を持ちません。建て替えや売却の予定がある物件では定期借家が検討されますが、借主にとっては期間が区切られるため、募集時の条件としては不利に働くこともあります。
賃貸契約書は貸主が自分で作ってもよいのですか
賃貸借契約は法律上、口頭でも成立するため、貸主が作成した書面で契約すること自体は可能です(定期借家契約は書面が必須です)。ただし条項に漏れがあると、解約予告や原状回復の負担で後からもめる原因になります。国土交通省が「賃貸住宅標準契約書」を解説つきで公表しているため、これを下敷きにする方法があります。個別の条項が有効かどうかの法的な判断は弁護士へご相談ください。
退去時の修繕費用は、どこまで入居者に請求できますか
2020年4月施行の改正民法621条で、通常の使用により生じた損耗と経年変化について借主は原状回復義務を負わないことが明文化されています。具体的な線引きは国土交通省「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン(再改訂版・平成23年8月)」が参考になり、日照による畳の変色や家具設置によるへこみは貸主負担、タバコのヤニや清掃を怠ったことによる汚れは借主負担という考え方が示されています。入居前の室内写真とチェックシートを残しておくと、退去時に見比べる基準になります。
賃貸の仲介手数料は、貸主と借主のどちらがいくら払うのですか
居住用建物の賃貸借の媒介では、宅地建物取引業者が受け取れる報酬の合計は借賃の1か月分+消費税が上限で、依頼者の一方から受け取れるのは原則としてその2分の1までと定められています(宅地建物取引業法46条、昭和45年建設省告示第1552号)。媒介の依頼を受けるにあたって承諾を得ている場合は、一方から1か月分まで受け取れます。どちらがどれだけ負担するかは募集条件の一部として設定できる部分です。
入居者から解約の連絡が来たら、貸主は何をすればよいですか
まず契約書の解約予告の条項を確認し、予告の到達日と退去予定日を記録します。期間の定めのない建物賃貸借では借主からの解約申入れは3か月前と定められていますが(民法617条1項2号)、実務では1か月前とする特約を置く契約書が多く見られます。退去日が決まったら、次の入居者の募集準備と、原状回復の立会い日程の調整を並行して進めます。立会いでは入居時の記録写真と見比べ、精算内容を書面にして渡す流れが一般的です。

株式会社ログリンク 代表取締役 菅雅俊
株式会社ログリンク
代表取締役
菅 雅俊KAN MASATOSHI
「空室・空き家を、満室に。」
宅地建物取引士賃貸経営管理士土地家屋調査士測量士FP3級
岡山市・倉敷市で空室対策に特化した賃貸管理サービス「満室本舗」を運営。国土交通省の賃貸住宅管理業登録事業者(国土交通大臣(1)第001348号)として、プロカメラマンによる物件撮影や物件専用ホームページの制作など、オーナー様第一の空室対策で早期満室化を支援している。
なぜ空室が埋まらないのか?
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